2010 |
藤田修司/吉村靖孝建築設計事務所 より
葉山で考えたこと 「海行ってくるね」きっと前に住んでいた住人は何度も交わした会話なんだろうな、と思いながら初めて葉山を訪れた。築80年になる古民家の改修をすることになったからだ。目の前に広がっていた天井高さが3Mもある大きな和室はとても愛らしく魅力的だったので、構造的に貧弱な建物を補強しながらいかに魅力的な空間を継承するかという事が課題でした。リノベーションというと既存の仕上材を取っ払って構造をむき出しにしたような、何となくみんなが想像するような手法が氾濫していて、そういったありがちな感じにはしたくないなと考えていました。ある日構造を担当していただいた鈴木さん(ASA)との打合せの際に耐力壁を並列させる事で2倍の耐力までカウントできるというアイデアが出てきて、小さな家が大きな家を支えるといった金八先生的手法が完成しました。それはほんの一瞬の会話の中から生まれたのですが、とても創造的な時間だったなと思います。新しく作った家の中の小さな家は、開口部を少しずつずらしながら配置していく事で新しい壁の脇から古い壁がちょこっと顔を出して、 この家の歴史を感じさせるいわば履歴書のような見え方をしています。既視感によってなんとなく感じていた部屋の大きさは、新しく挿入された小さな家によってスケール感がゆらぎ、不思議な場所が生まれています。減築でも増築でもない手法で、この家の時間を継承できたという意味で新しいリノベーションの形を示せたかなと思います。最後に。事務所も不思議な空間が広がっていますので、ぜひオープンデスクに応募してみてください! |
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