Takahashi-Studio

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10.06.23
塔の家/日生劇場 見学

日生劇場/村野藤吾1963年とても触覚的な空間でした。外壁の石張りは、いまもきれいです。劇場内部は、アコヤ貝やタイルを張り込んだ局面の天井と壁に覆われ、水中を思わせるような空間です。コーラル系の淡いピンクの座席に赤いカーペットの床、壁のタイルはピンク系の数種類の中に、金色のものと透明なものが混ざっています。扉など開口部の近くには金色が集まるようにして配され、それは、くぼんだ穴から光が落ちてくるような天井の照明と合わせたデザインのように見えます。音響を検証しながら削ったりもったりしたという曲面の壁は、水流に削られた海底の地形のようです。一方、エントランスの天井はアルミプレートを使ったアールデコ的造形です。左右対称をずらした図案は軽さやリズムを感じさせます。ホワイエ、廊下などの色調は赤と白に統一され、細い手すりや螺旋階段の曲線には華奢な優美さと上品さを感じました。曲面の壁・天井に職人の手の後がにじむような仕上げから、工業的な材料での直線的構成まで、何でも使いこなせてしまう、しかもそれをとても上手にまとめてしまう、村野藤吾の触覚の強さと器用さを感じました。また、椅子やテーブルやサインなどが竣工当時のデザインのまま、布を張り替えたりしながら使い続けられていることや、案内してくださった劇場の方のご説明の端々からは、この劇場がとても大切に使われ続けていることを感じ、これは日本生命にとっても建築家にとっても、とても幸せなことだなと思いました。