08.06.12 |
グレン・マーカット講演会 in よみうりホール
GALLERY・MA主催 「建築はその土地の気候・風土に根付いたものでなければならない」6月12日に有楽町よみうりホールで行われた講演会はその一文から始まった。プロジェクトの説明は必ず、その土地の湿度、景色、ランドスケープから入る。オーストラリア大陸の大きさ、気候、天候、植生、ランドスケープに関すること、(季節、地形学、地形の特性、水はけ、どこにあるのか、地球に対しての太陽の位置、海抜、内陸なのか沿岸なのか、温度・湿度、降水量は、雪は、など細かい要素で)そして環境と持続可能な建築を目指すため、材料や工法を選んで設計することの重要性について、全体のかなりの時間を割いて話していた。いかに自然とのかかわりが大切か。場所に対して、文化に対して、何かに対して応えることが建築だと強く訴えた。持続可能な建築とは、決して新しいものではない。氏はアボリジニー(オーストラリアの先民族)の砂漠と熱帯地域の住宅、ベドウィンのテント、ドブロブニク、モロッコの日干し煉瓦の街、アメリカ先住民の家、ミコノス島の石灰塗りの住居など、さまざまな建築を例に挙げ、素材や構成のすばらしさ、そのデザインの美しさについて語った。そして我々は今環境とひきはなされていると訴え、「根本的なことなのだ、寒いときは重ね着をする、暑くなれば一枚ずつ脱いでいく。人間は衣装で応えていく。このように建築も応えるべきだ。木陰や風を感じるヨットのように。」と述べた。とても素敵な例えであった。マーカット氏の建築からは先進的でかつ原始的な印象を受ける。紹介されたプロジェクトはすべて、風や光、素材や地形を操作して設備的でなく自然エネルギーを利用したプランニングで、自然環境と対峙し、その恩恵を最大限に生かす工夫がなされている。また氏の作品には、軒の深さや格子によって、日射やプライバシーの調整を行うようなものが多い。これらは日本古来の民家や茶室によく似ている。日本に来たことについては「30年前に来ていたらこんなに試行錯誤しなくてよかったかもしれない。けれど、来なかったからこそこの30年間でこんなにも成長したのだと思う。」と述べた。「手で描くことは何かを引き出すことだ。たどり着くまでが自分自身を発見する旅であって、designすること、drawingすることは建築家として旅することだ。」氏はオーストラリアの広大な大地、建築を取り囲む大自然を旅する冒険家なのである。 Written by Asuka Ogura |
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