07.12.01 |
藤江和子講演会 in ZAIM
JIA神奈川主催 2007年12月1日、横浜市中区の旧関東財務局「ZAIM」において、藤江和子氏による講演会が行われた。 藤江和子は宮脇檀建築研究所、エンドウプランニングを経て、1977年にフジエアトリエ、後に藤江和子アトリエを設立し、現在まで活動を続けている。建築家とのコラボレートも数多く、多摩美術大学付属図書館での伊東豊雄とのプロジェクトは記憶に新しい。 今講演ではこの作品も含め、これまでの数多くの作品を取り上げながら、「sense response建築・家具・人」をテーマに話が進められた。今回紹介された作品は、3つのシリーズで構成されている。木板の連続によって壮大な曲面を作り出す「くじらシリーズ」、不安定な形と鮮やかな色彩の「モルフェシリーズ」、不規則な面の集合による「万華鏡シリーズ」。これらはそれぞれ全く異なるフォルムを形成しているものの、その根底には人との関係という共通したテーマが存在する。藤江は、「人がいるところに建築があり、家具がある。これらを分けて考えることは出来ない。」と述べる。その言葉が示すように、作品には家具として使用する人との関係は勿論、人と人とを繋ぐ仕掛けをも内包させている。万華鏡シリーズの一つ、桐蔭学園メモリアルアカデミウムでは、巨大な壁のような家具にアイコンタクトを促すボイドを設けた。また、順天堂東京江東高齢者医療センターでは、同伴者を含めた2人以上が一緒に使用できる家具を提案した。また、藤江の家具には視覚だけではなく、体感として味わうものが数多くある。多摩美術大学付属図書館のラウンジソファーや、熊本県白川橋のフライングライトがそれを代表する。それらが及ぼす経験が、訪れた人にとって深く残る記憶となる。藤江は制作に当たって、「日々訪れる人にも、偶然訪れた人にも印象に残るものを」とも述べている。人が家具を通じて、その空間や景色を記憶として留めて欲しいという願いが込められている。講演会終盤には、参加者との意見交換が行われた。この中で、建築・家具・人の同時存在を考える藤江から、今の建築には人が寄り添える場所が少ないという問題点が指摘された。これは、建築と家具が人とどう関わっていくかということに直結した問題であり、建築や家具が日々新しくなっている一方で、最も大切である人との関わり合いがないがしろにされているのではないかという藤江からの警鐘でもあった。元来人と建築が触れ合う機会の少ない日本において、建物が一人歩きをし、人が寄り添える場所は用意されてこなかった。それは単に座る場所を確保すればよいというわけではない。人々が愛着をもって触れ合える空間が必要なのである。本講演会は、多くの建築関係者及び学生の参加によって、講演を始めとし多くの意見交換も行われた。3時間という時間の中で、非常に内容の濃い充実した時間を共有することが出来た。 Written by Tomomi Fukuda |
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