2007 |
多摩美術大学図書館
JIA神奈川主催 多摩美術大学付属図書館は、設計を伊東豊雄建築設計事務所が、図書館内部の家具を藤江和子アトリエが担当している。大学側の要望は、学科同士の交流の場としてのギャラリーを設ける事と大学のメインアプローチを図書館側に移す二点のみで基本設計がスタートしたそうだ。図書館の基本的な構成は、谷の中腹に位置する事が反映された1/20勾配の傾斜した床を持つ一階部分とフラットな床の二階・地下部分で成っている。一階と二階はカーブしながら交差するSC構造のアーチ列によって支えられている。このアーチは、鉄板をコンクリートで覆ったものでスパンは2,5m~16mと幅があり更にカーブしている為に、不思議な連続感と分節感を生み出している。それは、「連続しているけれど流動していない」という伊東氏の言葉が伝わってくる体験であった。一階には、通り抜け出来るギャラリー部分と二階・地下へと続く図書館機能があり、この二つは掲示機能も果たす透明な仕切りで二分されている。仕切りを越えて図書館部分に入ると、南側の本来地形に沿っていたなら傾斜の高い方が図書館スタッフのスペースになっていて床はフラットになっているが、北側の図書館利用者のスペースは地形に沿ってズルズルと下る様に傾斜している。その傾斜とアーチ列の中で書架はアール状の形で配置され家具も傾斜を吸収する様に作られていて、建物と家具との取り合いが見て取れた。又、北端に位置するラウンジには波打つソファだけが置かれている。そのソファは傾斜する地形やアーチ窓から見える風景と重なり、それ一つで建物が建つ場所の固有性を表現している様だった。そして、ドン詰まりで淀んでしまいがちな端部の空気を消す事にも成功している。曲線の階段を登り二階へ移るとそこは大きなワンルームになっていて、その大きなワンルームを、交差するアーチ列と書架や家具で分節している。交差するアーチの根本が場の拠り所となりつつ家具が配置され、カーブするアーチ列の間を縫う様にアール状の書架が人々を誘導していた。アーチと書架・アーチと家具・書架と家具の取り合い方によって少しづつ性格の違う場所を生み出している。書架の高さは低く抑えられ、椅子に座りながら本を探す際に丁度良く、見渡すと高い天井を強調し空間の連続性を映し出すアーチ列を見通す事が出来る。又、大きなアーチ窓に向っていると風景の中に飛び出して本を読んでいる様に感じられそうだった。一方、外へ出て建物を眺めると、内部で感じられたガラスの透明性による外部への連続性やアーチ列による空間の連続性とは異なる効果が見られた。ガラスとコンクリートの面一の外壁はアーチ型のパターンを浮かび上がらせ、多摩美術大学の顔となる象徴的な建物となっている。Written by Sakurako Kojima |
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